物理の勉強法

 物理で電気を教えた。教えたと言うより、高校生が電場や電位や電気力線や電荷を計算するのを見ていたと言う方が当たっている。高校生に物理を根底から教えるような上質の参考書はほとんどない。ましてや教科書や傍用問題集は重要な公式の成り立ちを天下りに教え、意味が分からなくても使っているうちに慣れるさ、という扱いだから、生徒は訳の分からない公式を頭の中に山ほど持ちあぐねているのが現状だ。

 例えば、Q(クーロン)の電荷から r(メートル)だけ離れた地点の電位(Vボルト)は V = Q/r という関係になる。また平行平板コンデンサでは電場を E とし、極板間の距離を d とすれば、V = Ed という公式が成り立つ。その理由は高校生に全く分からないでは無いが、自分のものにするには、なぜだろうと思う疑問と考えるだけの根気がいる。そして自分のものにしない限り、1行問題では使えるが、応用問題では使えない。
 では応用問題にはどう対処するか……、似たような例題を探してまねをするしかない。
 そうした答案を作る生徒は不幸だし、責任のない解答を見させられる先生はつらい。

 だからぼくは高校生の使う公式はほとんど信用しない。その公式はどうやってできたのか説明させる。すると生徒は立ち止まる。次にぼくは図をかかせる。そして V = Q/r という公式を説明しようとするな、という。大切なのは V = Q/r という関係式ではない。電位(Vボルト)はとは何か、V = Ed の電場 E とは何かという定義をまず確認する方が、彼らのはじめにやるべき仕事だからである。
 何事もまず、自分が当たり前だと思うことから出発しないと、できあがったものは砂上の楼閣になる。

 こうした教え方、つまりあやふやな、人まねの解法をまず忘れさせることから始める教え方はとても時間がかかるし、生徒本人だけでできるものではない。ただ一事が万事で、生徒はだんだんこの方法に慣れて、もう例題を写してくるようなことはしなくなる。自分の直感、常識、それから出発すれば後は速い。